花太郎と私
質の高いオナニーがしたい時、私は花太郎へ行く。
個室ビデオチェーン金太郎・花太郎グループ。
ショート60分400円 (延長30分550円) である。
この60分は戦いであり、一分一秒が惜しいのである。
それを見越した店側の配慮であろう、受付の前にAVを選別することが出来るのだ。
6作品、AVを選ぶことが出来るのである。
よく考えてみてほしい。
受付の前にAVを選ぶというシステム。
一見、なんと深慮遠謀なるシステムであろう、君子よ、この世に蘇りし神よ、そう思うやもしれぬ。
このシステム、受付のオッサンに自分が選別したAVを見せなければならないのである。
そして私が選別したAVは、私の情報と共に花太郎データベースへと送られるのである!
なんということだろう。
おお、なんということだろう…。
ヘラヘラしながら、好みのAV女優を3本、好みの企画モノを3本…。
そんなチョイスをした日にゃあ!!!
なんと俗物なことか、なんと愚鈍なことか!
受付のオッサンには「つまんねー性癖してんなこいつ」と軽蔑されることだろう。
すれ違うリーマンには「しょうもねぇ奴だな」と一蹴されてしまうことだろう…!
花太郎グループ本部からは「まぁこんなもんだろうな、分かりやすくて助かる」と舐められてしまうことだろう!!
何より私は、恐れているのである!
私の性癖という、文字通りの急所を、赤の他人に露呈することが、この上なく恥ずかしく、恐ろしいことだと、私は考えているのである!
私がネットリと時間をかけて選択したAVは、私のネットリとした性癖は、とても柔く、とても脆い、私のネットリとした弱点は、無数の人々によって抉られるのだ!
私の性癖は、私の内面、思想、主義、信条、そして私の人生!その全てを隅々まで余す事なく舐め回すように眺められているのである!!
こう考えると、私は羞恥から震えてしまうのだ。
指摘されれば、もう私は為す術もなく、ただ顔を臥し、全裸で跪いて、こう述べるしかない。
「私はこういう人間なのです…。ここには、これだけのポルノが収集されていながら、私めは、『Rioの一泊二日言いなり温泉旅行』でシコるような、性癖になんの変哲も、面白みも、ユーモアセンスもない猿なのです…。ごめんなさい、ごめんなさい…。」
私は、私の性癖から、私のオナニーのために3本。
どえらいAVを、「ナメんなよ」と、カモフラージュに3本、借りているのである。