エロの為なら何処へでも行けた 〜思春期が僕たちに教えてくれたこと〜
1.
陽射しが痛いほど照りつけている。
自動販売機の業者が冷たい飲料を補充している。
僕が、小学4年生の時、初夏、6月上旬ごろ。
僕が、小学3年生の新学期に田舎から街中へ引っ越してきて間も無く、母子家庭であるMくんと仲良く遊ぶようになった。
Mくんは学校近くのライオンズマンションの201号室にお母さんと2人で暮らしていた。
放課後をドッヂボールなどをして遊び、その後、Mくんの家にお邪魔して、wii sportsなどをして過ごした。
Mくんのお母さんが仕事から帰ってくるまで遊んでいた。
2.
その日は土曜日であった。
しかしMくんのお母さんは仕事だった。
僕はMくんとマンションの中庭でキャッチボールをして遊んでいた。
マンションの中庭では色々な遊びをした。
マンションの柱と柱の間をゴールに見立てて、サッカーのペナルティーキックで競ったりもした。
ボールを蹴るな!と怒られてからは、マンションのエレベータも使った鬼ごっこもした。
マンションで走るな!と怒られた頃、僕とMくんはキャッチボールをすることが多かった。
とても暑い日で、Mくんは自動販売機に補充されたばかりのccレモンを僕に買ってくれて、家に戻ろうと言った。
201号室に戻り、僕が手にしていた、あまり冷えていないccレモンを見かねたMくんは、ガラスのコップに氷を4つ5ついれ、「ん。」と顎を少しだけ出しながらテーブルに差し出した。
ccレモンが注がれたコップの、氷がカランと音をたてて溶ける。
僕はMくんの様子がどこかおかしいことに何と無く気付く。
Mくんは、おもむろに立ち上がり、ノートパソコンをうやうやしく机の上に置いた。
「めっちゃ面白いインターネットがあるねん」
Mくんは、僕の顔色を窺っているようだった。
普段から活発で血の気が多いMくんにしては、改まった申し出だった。
(その瞬間の、そわそわする、嫌な予感がする感じは今もよく覚えていて。海馬の奥深くに強烈にこびりついている。)
その時の僕は、好奇心に駆られ、Mくんの申し出を快諾した。
そして、Mくんは Yahoo! JAPANの検索ウィンドウに打ち込んだのだ。
「カリビアンドットコム」である。
3.
ノートパソコンの画面めいいっぱいに広がった、女体、女体、女体。
本能的に、良くないのではないか、危険ではないか、と察してはいたものの、(もっと見たい)という期待から来る動悸や心拍に飲み込まれていった。
Mくんは「無料サンプル動画」をひとつふたつ再生してみせた。
その内容が、おそらく成人されたであろう女性が、女児用のランドセルを背負い、通学帽を被って、リコーダーを妖艶に舐めあげるというものだった。
Mくんは「どや。すごいやろ。」と僕に語りかけてきていた。
下腹部に強烈な違和感を覚えた僕は、
「うん。すごい。でもなんかおかしいし今日はもう帰るわ。」
と言い、家に帰った。
帰り道、こっそりトランクスの中を確認すると、バシャバシャに湿っていた。
それを、親に気付かれないようにお風呂の中でゴッシゴッシと洗った。
4.
その後程なくしてMくんは、お母さんの仕事の都合で転校してしまった。
Mくんから教えてもらった「カリビアンドットコム」。
僕は家のパソコンの検索履歴の消し方も知らなかった。
それゆえに、一度「パイレーツオブカリビアン」と打ち込んでから、「パイレーツオブ」の部分を消して「カリビアンドットコム」と検索していた。
Mくんが教えてくれたこと。
「カリビアンドットコム」が教えてくれたこと。
パソコンの使い方だって、エロから学んだんだ。
あの日僕たちは何処へだって行けた。
あの日の僕たちは・・・。
〆